2019年2月12日火曜日

第5回JGN関東大会in筑波山地域「ユニバーサルデザインを学ぶジオツアー(2/2)」と 「分科会①ジオパークでUD(2/3)」【1】


つくばバリアフリー学習会は、筑波山地域ジオパーク推進協議会の市民活動部会会員として活動に参加しています。

20192/2()3(土)、5JGN関東大会in筑波山地域 が開催されました。
その中、筑波山地域担当のツアー・分科会として、「ユニバーサルデザインを学ぶジオツアー」と、ツアーと連動した「分科会①ジオパークでUD」を、杉原薫・筑波山地域ジオパーク推進協議会専門員、市民活動部会の方々、標本館、植物園の関係者のみなさんと検討・準備を進め、実施いたしました。

【ユニバーサルデザインを学ぶジオツアー(2/2)】

2/2(土)は、ツアー中の「UDの工夫ポイント」にも注目してもらいながら、主に筑波山について楽しく学ぶジオツアーを実施しました。

ツアー中の移動は、一日券で乗り降り自由な、つくば市内の研究所や展示施設をまわる循環バス

つくばサイエンスツアーバス 
楽しいイラストのサイエンスツアーバス外観
を利用しました。

車イスの方でも気軽に利用して見学を楽しんでいただけるよう、つくばサイエンスツアーバスは、車内の出入り口が低床で階段がないノンステップバスで運行しているそうです。今回は特別に、サイエンスツアーオフィスのガイドの方が同行くださいました。

一つ目の訪問先、地質標本館 では、「筑波山と周辺の地形」と、「岩石の風化の違い」について学びました。

館名石の前でフリップも使い説明いただく
手話通訳が丁度「筑波山」という手話(立てた親指が男体山、
小指が女体山を示している左手の上を、
人差し指でM型に峰の形をなぞる)を表しています
はじめに標本館の入り口の、館名が彫られた岩の解説とともに、標本館の紹介と、筑波山とその岩石についてお話がありました。

館名石をさわって観察
館名が彫られている大きな岩は斑レイ岩(はんれいがん)。
粒粒が特徴的との解説の後、参加者の方たちは触って確認していました。

館内に移動し、「筑波山と周辺の地形」「岩石の風化の違い」を2グループに別れ交替で見学。

「筑波山と周辺の地形」では、地理院の地形データを用いて作成された、ミニ、中型、大型の各筑波山模型で体感しました。

精巧なミニ筑波山を手に話を聞く参加者の方々
大型立体地図を触り凹凸を確認する参加者
 参加者の方へのお土産として用意くださったミニ筑波山は小さいのにとても精巧です。
一般的な立体コピーでは難しい、細かな部分も再現できる産総研開発の立体コピー機で型を作り、そこに石膏を流し込んで作られたものだそうです。
ミニ筑波山の裏側には、方角の北がどちらか、手で触ってわかるよう工夫がありました。

もう一つのテーマ「岩石の風化の違い」。

筑波山付近の岩石と、県北ジオパーク構想の石等、茨城県各地の特徴的な岩石の実物を見学。その後、筑波山を形作る、斑レイ岩と花崗岩(かこうがん)の風化の違いについて、わかりやすいイラスト入りフリップで解説。
 
イラスト入りフリップで解説
 元は硬い花崗岩ですが、風化がはじまるとぽろぽろと崩れやすくなり、最後には崩れて砂のようになる=「真砂化(まさか)」するというお話でした。
風化した花崗岩を用意くださり、実際に触ると崩れてしまうという体験もしました。
 
風化の進んだ花崗岩を触る
欠けた一塊は手で簡単に粉々に
館内の展示物にある2次元バーコードで解説文を読む事ができるなど、館の取り組みも紹介いただきました。

サイエンスツアーバスは、標本館や植物園、それから、宇宙センターや地図と測量の科学館など各展示施設のバス停を結び運行されています。今回訪問する2箇所のほかの施設各所も寄りながら、つくばの街を楽しんでいただきました。施設間の移動の間も、バスの中でガイドの方から、つくばの街について、また各研究施設や展示施設について、クイズも交えながら楽しくお話いただきました。

次のツアー訪問先は、国立科学博物館 筑波実験植物園
着いた時間は丁度お昼。植物園のお部屋をお借りし、「茨城県北ジオパーク構想応援弁当ジオ丼®」の噴火型(あたためるお弁当)をいただきました。
噴火がおさまるまでの時間で、お弁当の工夫を説明頂きました。
「噴火・発掘 体験型弁当」楽しい工夫いっぱいの丼です
午後は園内でのツアー。
写真やイラスト、文字のフリップを真ん中に、読み上げ原稿を元に、声での案内と、ろう者(手話話者)による手話での案内で進行します。
案内人2人の後ろのフリップ担当者は踏み台に乗っていま
はじめに『岩石』や『鉱物』等、ジオに関連する手話単語をご紹介。参加者のみなさんもいっしょに手を動かしてくださっていました。
 
「岩石」の手話
手話をする参加者のみなさん
園内の「世界の生態区」へ移動し、ドングリや木の葉・枝など実物をさわったり、においをかいだり、日光の様子の違いなども感じながら、常緑広葉樹、落葉広葉樹など森の様子の違い・・・筑波山にも見られる山の植生の「垂直分布」を、ほぼ平らな植物園を歩いて体験しました。
どんぐりなど実物も多数用意くださっていました

森林の様子ががらっとかわります
地質標本館も実験植物園もとても充実していて、ツアーの滞在時間ではとても回りきれていません。またの機会にぜひ、つくばに、そして両館にいらしていただければ!と思います。

ツアー終了後は開会式と基調講演。話したことを文字で表示する「要約筆記」をステージ上のスクリーンで表示しました。(客席側写真の手前側、PCの方たちが入力しています。翌日の成果発表にも要約筆記がつきました)
 
開会式・基調講演舞台全景
客席の様子。2階3階席までいっぱいです
要約筆記・手話通訳がつく場合、講演や司会が話す内容、専門用語や来賓の方のお名前を単語登録したり漢字によって表す手話を選ぶなど、確認・準備をして本番を迎えてもらうために、事前に要約筆記者・手話通訳者に情報を渡すことがとても大切になります。

今回、基調講演の中田先生はじめ、UD分科会の事例紹介講師の方たち、司会進行の方、サイエンスツアーバスのガイドの方みなさんが快く情報提供くださいました。(要約筆記者・手話通訳者には守秘義務があり、頂いた情報が外に漏れることはありません)
あまり表には出ないことですが、このようなお一人お一人の理解と協力で‘UD‘な場が可能になります。ご協力ありがとうございました。

第5回JGN関東大会in筑波山地域「ユニバーサルデザイン(UD)を学ぶジオツアー(2/2)」と 「分科会①ジオパークでUD(2/3)」【2】


つくばバリアフリー学習会は、筑波山地域ジオパーク推進協議会の市民活動部会会員として活動に参加しています。

20192/2()3(土)、5JGN関東大会in筑波山地域 が開催されました。
その中、筑波山地域担当のツアー・分科会として、「ユニバーサルデザインを学ぶジオツアー」と、ツアーと連動した「分科会①ジオパークでUD」を、杉原薫・筑波山地域ジオパーク推進協議会専門員、市民活動部会の方々、標本館、植物園の関係者のみなさんと検討・準備を進め、実施いたしました。

 2/3(日)は、ジオパークの魅力度アップにもつながるUDということで、UDの概念を知り、より多くの人が知恵を出し合い、環境や情報を整備する事の重要性を学ぶ分科会

スクリーンの右は手話通訳者
今回の分科会の目的と、UDの7原則の紹介に続き、「昨日のジオツアー、どこにUDが隠れてた?」ということで種明し。

続いて、第1部では、3名の方からそれぞれ、施設整備、ガイドの手法、情報媒体について、UDに関連する事例紹介をいただきました。

昨日のジオツアーで植物園を案内いただいた筑波実験植物園の堤千絵さん
「筑波実験植物園におけるUDの取り組み紹介」
手話を交えた堤さんのお話
さわれる植物もいくつか会場にお持ちいただきました
筑波山地域ジオパークの認定ガイドで茨城県北ジオパーク構想のインタープリターでもある上野静子さん
「ユニバーサルデザインを取り入れたジオツアー」

多くの人が視覚優位、目で見てわかる方法が有効とのお話をされています
上野さんがガイドで活用しているフリップ類もお持ちくださいました
視覚障害者・聴覚障害者の方が通う 筑波技術大学 の飯塚潤一教授
「みんなに正しく伝えたいー色覚多様性を考慮した情報発信の重要性―」 
講演中の飯塚先生
色覚特性を体験するレンズでパンフレットをみてみる
 視覚障害を補償するグッズの紹介ブースも用意くださいました

第2部 触れて感じよう!石ころの旅~岩石標本でジオパークと
UDに親しむ~

杉原専門員の司会進行で、筑波山地域ジオパーク推進協議会、教育学術部会・市民活動部会、認定ジオガイドの会に所属する方たちに各班にファシリテーターとして入って頂き、ワークショップを実施しました。
右側に手話通訳

各班にファシリテーターがついて進めます
3人でいちグループになり、2人がアイマスクをして手触りで石を観察し、つるつるからざらざらまで順番にならべ、半分ずつ担当して感じた特徴を言葉にし、メモ担当の人が記入するという分担で進めます。
じっくり触って観察
言葉で表現していきます
アイマスクの方同士2人が、石を触って観察しながら会話がはずんでいる様子がとても印象的でした。

ほおで感触を確かめる方も!

手話を目で見る‘ろう者‘の方には、アイマスクでなく袋で石を隠す
最後に、今日使った石のほとんどが、筑波山地域ジオパークにある桜川の河原のものであること、手で触った表面の感触や石の形が、どのような由来の岩石なのかの手がかりになること、実は現在筑波山周辺にある石ではないものもそこに含まれているということとその理由など、「石ころのジオ的背景」の解説がありました。

今日の分科会のまとめとして、

『・UDを考慮に入れて、相手に伝えたい情報を整理・発信すれば、
  多くの人が同等のレベルでその情報を共有することができる。

 ・難しい専門用語を並べ立てなくても、五感を活用できる施設や
  グッズ、ガイド手法などがあれば、より多くの人にジオパークを
  もっと楽しんでもらう事ができるはず!

  あなたのちょっとした気づき、配慮と工夫が、あなたのジオパークを
  もっと魅力的なものにします!』

と、杉原専門員からお話がありました。
司会進行では、ワークショップの流れをイラストや図を多用したパワーポイントで、とてもわかりやすく説明していただきました。

分科会の記念品として、筑波技術大学飯塚先生のご協力で、点字プリンタで印刷された点字用紙を使い、つくば市にある「みもり園」の作業班の方たちが作成した封筒と、土浦市にある「尚恵学園」の木工班の方たちが作った、筑波山地域ジオパークのロゴの木工品、そして、参加者のみなさんの「点字ネームシール」を用意させていただきました。

点字用紙封筒とロゴ木工品。
ユニバーサルミュージアムの活動をされている方から
浮き出し点字カードのプレゼントもいただきました
今回のツアー・分科会で触れたUDは、あくまで一つの例で、きっと、みなさんのジオパークですでにそれぞれ、されていることがあると思います。
一人ひとりの気づきや工夫・配慮が、より多くの人の参加を可能にするだけでなく、より楽しくし、ジオパークの魅力をいっそう引き出すことにもつながる・・・今回のツアーと分科会でみなさんと再確認し共有できていたとしたら幸甚です。今後もジオパークのUDについて情報交換等させていただけましたら大変ありがたいです。

参加者の皆さんの積極的な参加と、標本館・植物園の方々はじめ、多くの方のご協力があって二日間のツアー・分科会を無事行うことができました。
参加者の皆様、関係者のみなさまに心より御礼申し上げます。
本当にありがとうございました!!

大会前に「ニュースつくば」鈴木記者に取材していただきました。
ニュースつくば